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障害者の教育障害者のマグナカルタ法(8章32項h)では、障害者に対して質の高い教育を受ける権利を認めており、フィリピン全土で障害児には特殊教育が提供されることになっている。高等教育に進む貧困家庭の障害学生には奨学金、学生ローン、補助金などの経済的支援も認めており、また国立大学の障害学生に対しては、必要に応じ特別なファシリティの提供、支援に必要な資金配分などを規定している。また、障害者に対する支援機器の研究も奨励されている。 NSOの2000年の国勢調査によれば、5歳以上の障害者のうち46.37%の人が小学校に通った経験を有する(卒業を含む)。また16.53%が高等学校を卒業しており、わずか2.57%が大学を卒業している。また障害者の識字率は69.43%であり、同年齢の非障害者の識字率90.57%と比べると20%以上低くなっている。 森(2010a)が実施したマニラ首都圏の標本調査では、403人の対象者のうち32人(約8%)が全く教育を受けておらず、98人(約24%)が小学校を卒業していない。しかし一方で、101人(約25%)が大学以上(中退を含む)に進んでいる。つまり小学校を卒業していない障害者が4分の1という高い割合でいる一方で、大学まで進んでいる障害者も同様に4分の1程度いることになる。本調査をNSOの2000年の国勢調査と比べると、非常に高い割合で障害者が高等教育まで進学していることになる。 障害種別で見ると、視覚障害者には未就学の人が多い一方で、大学まで進学する視覚障害者の数も多くなっている。修士課程まで進んだ障害者は視覚障害者しかいない。また大学を卒業した障害者の中では、聴覚障害者の割合がもっとも低くなっている。障害種別の教育水準の内訳は以下の表1の通りである。
注)フィリピンの教育は、小学校6年、高校4年、大学4年を基本としている。 また森(2010a)は同じ調査で、視覚と聴覚障害者の識字について以下のような報告をしている。視覚障害者の86.1%が何らかの手段で識字が可能である。全盲の障害者で点字を読める人は6割強いるが、約35%の全盲標本障害者は文字情報にアクセスすることができない。点字を読める45人すべてが点字板と点筆を利用しており、それ以外にも、スクリーン・リーダー付きの携帯電話を利用する人が15%、スクリーン・リーダー付きコンピューターを利用する人が10%いた。聴覚障害者の場合、標本障害者108人のうち80.6%が英語で読み書きが可能である。一方で、タガログ語の読み書きが可能な人は32.4%にとどまっている。また手話に関しては、96人(89%)が、フィリピン手話かその他の手話が使用可能であった。 JICAの平成14年(2002年)の「国別障害関連情報・フィリピン共和国」によれば、特殊教育学校94校、特殊教育センター(校内に設置)14カ所、寄宿学校19校、病院学校2校、特殊学級4292校、統合プログラム23校が存在する。 なおこの資料は中西(1996:173)にも掲載されており、統計はほぼ同じである。また中西は、92〜93年度でフィリピンの公立、民間の教育機関で教育を受けている障害児は、全体の約2%(81,901人)と報告している。 |