タイ
概要
障害者の現状
障害者の統計
障害関連の主な法律
障害関連計画と政策
障害者の教育
障害者の就労
障害者運動の歴史
自立生活センター
障害関連施設・リハビリテーションセンター
社会保障制度
参考資料
トップ  > 国別障害情報  > タイ  > 障害者の就労  > 労働省令後のタイ障害者就労の現状

労働省令後のタイ障害者就労の現状(2013年7月現在)

  • 納付金の現状と企業の対応

    社会開発人間安全保障省からの聴き取り調査によれば*1、タイでは2012年度で約13,000社が労働省法令で定める障害者雇用の対象となっている。このうち法定雇用率を満たした企業は全体の23%であった。その結果、17,272人の障害者が雇用されている。一方で、雇用率未達企業の46%(4,617社)が2012年度に拠出金を納付しており、合計で12億6千万バーツ(約42億6千万円*2)が障害者基金に納められた。しかしまだ4,616社が未納とされている 。この数字を見ると、未達企業が7割以上あり、障害者雇用の更なる促進が望まれるが、一方で、半数近い企業が拠出金を納めており、省令の効力が一定程度働いていることが分かる。なお、この数字は政府のウェブサイトなどではまだ公表されていない(2013年7月20日現在)

  • 企業動向

    タイ政府が4月に開催した障害者の雇用セミナーによれば、BIG CやTESCO Lotus、Toyota Bangkokなど企業8社が、障害者雇用を積極的に推進した功績として政府から表彰されている。新聞報道*2を見ると、BIG Cでは、114の支店に305人の障害者が雇用されており、法定雇用率より26%も高い水準で雇用したとされている。TESCO Lotusでは、45,842人の従業員のうち212人(0.46%)が障害者ということであった。また報道では、タイでは7万人の障害者が就労を希望しているが、実際に雇用されている障害者は1万8千人と伝えている。

    BIG CやTESCO Lotusは、大規模なスーパーマーケット・チェーンとして、タイでは有名であるが、障害者雇用を進めた理由は記載されていなかった。恐らく企業イメージに配慮した対応と考えられる。また8社のうち、日系企業はToyotaのみであり、日本国内同様、トヨタの障害者雇用に対する意識は高いようである。

  • 政府の雇用サービス

    労働省雇用局は、日本のハローワークのように障害者を含む公的な求人情報を提供する機関として設置されている。労働省雇用局のウェブサイトに障害者向けの求人情報も提供しているが、まだ十分な情報が掲載されていないようである。また民間になるが、タイ身体障害者協会もウェブサイトで障害者を求人する企業情報を掲載している。

  • 障害者基金の活用

    タイ政府によれば、障害者基金*5は「障害者の生活の質の改善」と「障害者団体の育成」、例えば、障害者に対する訓練、教育、貸付、奨学金などに使用される予定である。また「障害者サービスセンター」なるものを許認可制により設立し、障害者の就労支援を実施させる構想も進んでいる。本センターは、障害者基金によって支援され(拠出額は未定)、障害者の職業訓練や就労支援サービスなどを実施することを想定している。このセンターは、日本の就労支援事例を参考に提案されたもので、タイではまだレデンプトリスト障害者職業訓練校*6くらいしか上手く行っていないそうである。

[*1] 2013年4月17日に、DPI日本会議の宮本氏による聴き取り調査。
[*2] 2013年4月26日付けヤフーファイナンスより。1バーツ=3.382594円で計算
[*3] 納付した企業数と未納している企業数の割合が計算上は合わないが、ここでは政府から提示された企業数をそのまま採用している。
[*4] 4月22日付けのBangkok Post
[*5] 基金に関してはエンパワメント法の23条以降に記載されている。正式名称は「障害者の生活の質の向上と発展のための基金」である。目的は、障害者の生活の質を保護・発展させ、障害者、リハビリテーション、教育、就業に関して進行、援助等をするための費用を支払うためである、と規定されている。基金は、基金管理小委員会によって管理され、社会開発・人間の安全保障省次官が委員長を務める。他に6省庁の代表、および9名の専門家が委員として任命されるが、9名のうち7名は障害者団体からの代表でなければならない。
[*6] タイでは有名な肢体障害者を対象とした職業訓練学校。毎年200名近い卒業生がいるが就職率は100%と言われている。パタヤ市にある。