タイ
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障害関連の主な法律

  1. タイ王国憲法(The Constitution of Kingdom of Thailand 2007, B.E. 2550

    2007年8月24日公布。障害者の権利に関するいくつかの条項が含まれている 。たとえば、第30条では障害者に対する差別の禁止、第40条では障害者に対する訴訟審理における適正な保護、第49条では、障害者を含むすべての人が最低12年間の良質で無償の教育を受ける権利があるとされ、また障害者が他者と同等の教育を受けるために国から支援を受ける権利も認めている。その他、第54条では、公共便益等へのアクセス・利用に関し、第80条では福祉政策に関し、また第152条では、法律の規定に関する文言の中で障害者のことが言及されている。

    タイ王国憲法に対する障害者の関与と成立過程
  2. 障害者エンパワメント法(Persons with Disabilities Empowerment Act 2007, B.E.2550

    2007年9月18日公布されたタイで2番目の障害者法。障害者の権利や利益の増進、差別の解消などを目的として作られている。全45条。(タイ語の正式名称を和訳は「仏歴2550年障害者の生活の質の向上と発展に関する法律」)

    本法では、まず4条で「障害の社会モデル」に基づいた新しい障害者の定義がされている。また5条から11条では、「障害者の生活の質の向上と発展に関する国家委員会(通称、エンパワメント委員会)」に関する規定があり、首相を委員長に、社会開発・人間の安全保障相を副委員長とし、その他、各省の次官そして各障害者団体代表の7人と識者6名の計26名によって構成されている。(西澤2010)

    第15条から差別禁止規定があり、障害者に対する不当な差別を禁止している。そして第20条は、障害者、保護者、介助者に対する権利と利益について定めており、公的な便益として以下のサービスが利用可能である。1)医療・教育・職業のリハビリテーションサービス、2)差別からの保護、3)社会・経済・政治屁の参加、政策・計画・プロジェクト・活動・情報・コミュニケーション・遠隔通信・手話通訳・障害者年金と生活保護へのアクセス、4)エンパワメント基金の運営、5)障害者と介助者に対する免税など、である。(西澤2010)

    また第23条からは「障害者の生活の質の向上と発展のための基金」関する規定があり、基金は、障害者の生活の質を保護・発展させるために使用される。第33条からは障害者雇用に関する規定となり、障害者が雇用できない企業は基金に拠出金を支払うことや障害者雇用に対する減免処置などが規定されている。(西澤2010)

    [*]タイ語の正式名称を和訳すると「仏歴2550年障害者の生活の質の向上と発展に関する法律」となるが、本稿では英名のエンパワメント法とした。
  3. 国家教育法(The National Education Act 1999, B.E. 2542
    第10条において、国が提供する最低12年間の基礎教育を受ける平等な権利と機会をすべての人が有していると規定している。また全国で提供されるこのような教育は、良質で無料と定められている。さらに、肢体、精神、知的、感情、社会、コミュニケーションや学習に機能障害があるか身体障害なので自立困難な人や貧窮者も、基礎教育を受ける権利と機会が提供されるべきだとしている。
  4. 障害者の教育に関する法律(Persons with Disabilities Education Act 2008, B.E. 2551)
    本法は、障害者が出生もしくは障害者と診断された時から、生涯学習を受けることができるとし、この教育は無料となっている。また障害児は、支援技術とメディア、学習支援とサービス、さらに彼らのニーズに合わせた支援が提供される。また、障害児は他者と同等の基準と質を保った教育を受ける権利があり、彼らのニーズに合わせたカリキュラムと学習プロセス、評価の適切な変更が認められている。
  5. 国家健康保障法(the National Health Security Act 2002, B.E. 2545)
    第5条において、高度で効果的なリハビリテーションなどの公的支援をすべての個人に保障している。また国家健康保障制度に登録している障害者にはゴールドカードが支給される。この制度によって、障害者は各種様々なリハビリテーションを受けることができる。
  6. 精神保健法(Mental Health Act 2008 B.E. 2551)
    精神障害者の権利を保障している。本法により、患者は、尊厳を尊重された標準の医療行為にアクセスできる権利を有している。

またこれ以外に、いくつかの省令が国家障害者エンパワメント委員会や小委員会の提言により策定されている。たとえば、病院や市役所、警察署など多くの障害者に利用される場所では、障害者に対するアクセシビリティや設備が用意されなければならない。また、障害者の法定雇用率は0.5%から1%に引き上げられ、違反した場合は、「雇うべき障害者数×365日分の最低賃金」に相当する額をエンパワメント基金に納めなければならない。

障害者運動が法律制定に与えた影響