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障害関連の主な法律

2008年障害者法 (Persons with Disabilities Act 2008)
正式名称「障害者の登録、リハビリテーション、発展及び福祉並びに国家障害者評議会の設置等に関する法律 (An Act to provide for the registration, rehabilitation, development and wellbeing of persons with disabilities, the establishment of the National Council for Persons with Disabilities and for matters connected therewith)」

2007年12月18日に議会で可決され、2008年1月24日に発布された、マレーシアで初めての障害者に関する包括的な法律。この法律と同時に「障害者政策」と「障害者計画」も議決されている(久野 2010; 150)。

川島(2010:208)は久野の文献などを参照し、本法の背景を以下のように報告している。マレーシア政府は、包括的な障害者法の必要性を「アジア太平洋障害者の10年(第一次1993~2002、第二次2003~2012)」やマレーシア人権委員会の設立(1999年)、障害者当事者運動の活性化などを背景に、1990年代後半から注目するようになった。法案作成には障害当事者も参画し、第一次草案は2001年に作成されている。議決まで6年以上の時間を費やしているが、川島の報告には詳しい過程は記されていない。審議は滞っていた時期もあるが、障害者の権利条約や国内の政治的動向などの影響を受け法案が議決された、とのみ記されている。

また川島(2010:208)は、2008年法は障害者の権利条約の影響を受けて成立していると報告しており、その理由として、2008年法の障害や障害者の定義が権利条約の概念と酷似していることを上げている。この点で川島は2008年法を評価している。しかし一方で、2008年法は差別禁止法ではなく、罰則規定も設けていないこと、推進母体たる審議会が常設でないこと、また実施予算が限られていること、などが課題として捉えられており、特に現地の障害者団体は、罰則規定と予算に関し大きな懸念があることも川島は報告している。実は、2008年法の第一次草案には、障害差別禁止規定が盛り込まれていたが、司法長官事務所(Attorney general Chambers)から指摘[*1]を受け差別禁止規定は排除された(久野2008:124)そうである。したがって今後の課題は、「(法律を)基礎・土台として権利を保障するための様々な具体的な制度や仕組み・サービスを構築していくこと(久野2008:128)」と考えられている。

その他の障害関連法として久野(2010:151)は、「労働者補償法1952年(Worker’s Compensation Act 1952)」と「被雇用者社会保障法1967年(Employees Social Security Act 1967)」は、中途障害労働者のみを対象としており、保障手当と障害手当に重点が置かれていること。また「特殊教育法1961年、1997年改訂」は、障害者の教育に関する規定があり、「統一建築物細則1984年」には、障害者のアクセスに関する規定がある、と報告している。

[*1]久野(2008:124)によれば、司法長官事務所は「マレーシアの法律では、アメリカ障害者法のような差別禁止法ではなく、日本の障害者禁止法のような性格の法律を目指す」という説明がなされたそうである。