マレーシア
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CBR
参考資料
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障害者の就労と職業訓練

松井(2012:188-192)によると、マレーシア政府は1990年に障害者雇用を奨励する為に特別な優遇税制を導入している。しかしながら、どのような税制の詳細は記されていない。また2001年に3000人程の障害者が民間部門で雇用され、2003年にはさらに2000人程の障害者が雇用された。その他、障害者雇用に関しては、労災分野が比較的発展している。マレーシアで労災関係の業務を担当しているのが社会保障機構で、1969年の「被用者社会保障法(Employees’ Social Security Act 1969)」を受け1971年に設置されている。社会保険は、業務災害保険と就業不能年金のふたつからなり、業務災害保険には、障害給付やリハビリテーションが含まれており、就業が不能と判断されたものには年金が支払われる。本機構は、職業リハビリテーションを無償で提供している。その他、2008年の障害者法において障害者雇用に関することは第29条の「雇用へのアクセス」となっており、その1項と2項は以下の通りである。

  1. 障害者は、非障害者との平等を基礎として雇用にアクセスする権利を有する。
  2. 使用者は、非障害者との平等を基礎として、公正かつ良好な労働条件(平等な機会及び同一価値の労働についての同一報酬を含む。)、安全かつ健康的な作業条件、ハラスメントからの保護及び苦情救済についての障害者の権利を保護するものとする。(松井2012:195-196)

久野(2010:155-156)によれば、政府と公的機関で少なくとも定員の1%は障害者を雇用するという指針が、1988年の「公共サービス条例10/1988」で出されているが履行義務は記されていない。1990年になると民間でも1%の障害者雇用を目指し「雇用における障害者雇用機会・就職促進全国委員会」が設置され、91年から雇用促進キャンペーンを実施している。また2001年には障害当事者団体からの提言を受け「民間部門における障害者雇用に関する指針」が作成されているが、こちらも履行義務は記されていない。障害者雇用を推進する企業がいくつかあるものの、全体的に障害者雇用はあまり進んでいない。

その他、障害者の支援策のひとつとして給与補填制度がある。月収1,200リンギット以下の被雇用障害者に対し、月額300リンギットが福祉局より支給されることとなっており、2008年度には24,761人に対して支給されている。また障害者に対する起業支援として、社会福祉局が2,700リンギットを上限に小規模事業の起業を支援する制度もある。作業所は、公立のものが2ヶ所(86人)、公的資金の支援を受けているものが15ヶ所ある。すべて基本的に肢体障害者のみを扱っている。(久野2010:156)

中西(1996:218)によれば、マレーシアの公的な職業リハビリテーション施設は、社会福祉局が運営するチェラス・リハビリテーション・センターと1993年にスランゴールに設立された労働訓練リハビリテーションセンター(Industrial Training and Rehabilitation Center)である。労働災害の障害者に対し治療と職業訓練を提供している。また他にも、グルネイ訓練センターがクアラルンプールにあり、視覚障害者を対象に電話交換、速記、木工、マッサージなどを教えている。