CBR
久野(2008:184)によれば、マレーシアのCBRは1983年に社会福祉局とWHOとの協力で始められ、2006年には364のプログラムが実施されている。1995年にはCBR実施要領が作成され(2002年に改定)、福祉局では農村部の障害者福祉の核とされている。福祉局は通常、地域にCBRセンターを作り、CBR委員会を住民が形成し、CBRワーカーを福祉局の補填で雇用し、センターにおいて教育的なリハビリテーションを子供に提供するものである。またマレーシアでは、福祉局以外にも保健省やその他のNGOが独自にCBRを実施している。
表1:社会福祉局CBRプログラムの概要(2006年)
州 | CBRプログラム(件数) | CBRワーカー(人) | CBR利用者(人) |
Perlis | 3 | 12 | 89 |
Kedah | 23 | 112 | 916 |
Penang | 18 | 55 | 334 |
Perak | 34 | 134 | 919 |
Selangor | 37 | 168 | 1056 |
Kuala Lumpur | 6 | 18 | 94 |
N. Sembilan | 33 | 132 | 1045 |
Malacca | 17 | 53 | 361 |
Johor | 59 | 213 | 1167 |
Pahang | 39 | 138 | 761 |
Terengganu | 35 | 111 | 670 |
Kelantan | 26 | 102 | 565 |
Sabah | 20 | 87 | 636 |
Sawarak | 13 | 93 | 623 |
Labuan | 1 | 5 | 24 |
Total | 364 | 1433 | 9260 |
出典:久野研二(2008:185)より転載
久野(2008)の報告では、CBRプログラムの指針策定や改定、実地要領作成などに障害者は参加していない。CBRの全国会議(1989年と1995年)にも障害者団体の代表などは参加しておらず、唯一、マレーシア盲人協会の代表として視覚障害者が1名参加しているのみである。また2000年からCBRマニュアルの作成が進められているが、この政策委員にも障害者は入っていない。またマレーシアのCBRの特徴として、「CBRの利用者・参加者がマレー系の軽度知的障害児に偏っている」と久野は指摘している。したがって、久野はマレーシアのCBRを、「『障害の医学モデル』を基礎にした機能回復訓練を主とするリハビリテーション戦略としてのCBRは、結果として障害者を『訓練されるべき対象』に押しとどめ、プロセスにおける障害者の実施社としての参加を促進するものとはなっていない」(久野2008:190)と結論づけている。
中西(1996:216-217)もマレーシアの初期のCBRについて報告している。それによれば、マレーシアで最初のCBRプロジェクトは1984年に始まったクアラ・トレンガヌ(Kuala Trengganu)のプロジェクトである。55人の障害者を対象に始まっており、指導者はWHOのコンサルタント(当時)のパドマニ・メンディスである。この成功を受け、社会福祉局とNGOが他の地域でもCBRを始めることとなった。1994年には社会福祉局が統括するCBRは74にも増え、増加した理由として、政府が月に36人のボランティアワーカーに300リンギットの手当を1年間支給したことが上げられている。
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