ベトナム
概要
障害者の現状
障害者の統計
障害関連の主な法律
障害者の教育
障害者の就労・職業訓練
社会保障制度
枯れ葉剤の影響
参考資料
トップ  > 国別障害情報  > ベトナム  > 障害者の教育

ベトナム 障害者の教育

NCCDの2010年の調査によれば、ベトナムでは次の3つの形態で障害児に教育を提供している。1)インクルーシブ教育、2)特別支援学校、3)準インクルーシブ教育である。

インクルーシブ教育:省レベルのインクルーシブ教育支援センターが20省・都市に整備されている。教員用のインクルーシブ教育・研修ネットワークが大学、短大、研究組織に設立された。2002年から300人近くの生徒が障害児教育の研修を終了している。各省の教育研修局からの報告によれば、2001年度では7万人の障害児が97地域(Districts)の541市(provinces/cities)にある1900の学校に通っていた。それが2003年度になると10万人の障害児と増加し、2004年度には23万人、そして2007年度になると29万人の障害児が学校に通っており、この数字は全障害児童の28%にあたる数である。

特別支援学校:2001年には全国で90校あった特別支援学校だが、2010年には106校に増加している。学校では、障害児をケアし特別教育やリハビリテーションを提供するために必要な設備や機器、教室などが用意されている。その中で、精神障害児、聴覚障害児、視覚障害児に教育を提供している。特別支援学校にいる障害児の数は増加している。2001年度には7,000人だったが、2003年度は7,500人、そして2006年度は9,000人となっている。またKane(1999)によれば、1996年時点で104校の養護学校があり、うち54校がろう学校、14校が盲学校、36校が知的障害養護学校である

準インクルーシブ教育:上記以外の障害児教育として、地域ベースのデイ・スクール、コミュニティ・クラス、混合クラス、サテライトクラスなどがあり、様々な形で障害児を含む児童に教育やリハビリテーションを提供している。

障害児の教育は教育法(Decree 75/2006/ND-CP)のよって規定されている。貧困家庭の障害児は授業料が免除される。

同じくNCCDの2010年の調査によれば、ベトナムにおける障害児の教育は、まだ質的にも量的にも問題が生じている。多くの障害児、特に地方や山岳地帯、また精神障害児童には教育の機会が与えられていない。教育科学研究所の2007年の報告によれば、学校に一度も行ったことがない障害児童は女児で55.49%、男児で39.01%である。学校に行くことができる障害児童の割合は毎年少ししか増加しておらず、2005年度で24.22%、2006年度で27.38%、2007年度でたった28%であった。また中学校に通う障害児童の割合は全生徒数の0.91%である。さらに、障害児童の中退率は大きな問題であり、2007年の報告では、学校に通学する障害児童の実に32.99%が途中で学校を辞めている。障害児童を持つ家族への啓発も課題となっており、障害児童を持つ世帯の26.1%しか自分の子どもを学校に通わせようと思っていない。さらに6歳から18歳の障害児童のうち教育を受けたいと思っている児童はたった6.9%である。また聴覚障害児の教育が難しく、ほとんどの聴覚障害児童は特別支援学校で学んでいるので、彼らを受入れられる高等教育機関がほとんど存在せず、聴覚障害児童が高等教育を受ける機会が非常に限られている。

寺本(2010:123)によれば、障害者の非識字率は約35.83%であり、ベトナム全体の同比率は6.1%となっているので、ベトナムの障害者の非識字率は高いとしている。

JICAの「国別障害関連情報・ヴェエトナム社会主義共和国」によれば、障害者が教育を受ける権利はいくつかの法律に記載されているが、実際に教育を受けている障害者は対象とされている障害者の約半数となっている。また1999年時点でインクルーシブ教育や特殊教育によって学ぶ機会がある障害児は40~50%である。障害児の非識字率は、都市部で26.6%、農村部で36.9%、全国平均は17.1%であり国の平均値を大幅に下回っている。ベトナムでは、知的障害者は特殊教育を受けるように進められているが、他の障害児は普通学級に入ることが奨励されている。インクルーシブ教育は、1998年までに34省内の44郡で実施されている。

障害者の教育レベル

労働・傷病兵・社会省の2008年の調査によれば、障害者の教育レベルは以下の通りである。

 不明小学中退小学卒業中学中退中学卒業高校中退高校卒業
割合(%)34.421.29.314.09.12.89.2

障害者の教育レベル
出典:NCCD(2010:9)「障害者法令実施調査、MOLISA、2008」より転載(翻訳:千葉)